なぜインフォマートはinvoxと資本業務提携を強化したのか——両社トップが語る信頼の背景
2026.4.6
3年連続で請求書受取サービス導入社数実績No.1(※)を獲得しているinvoxと、企業間取引のデジタル化を25年以上にわたり推進してきたパイオニア、インフォマート。
2026年1月、両社は資本業務提携の強化を発表しました。
業界の注目を集めた今回の発表ですが、その背景には単なる技術評価だけではない理由がありました。
2016年の出会いから始まり、2020年の協業を経て関係を深めてきた両社。
なぜインフォマートはinvoxとの関係をさらに深める決断をしたのか。
株式会社invoxの代表取締役 横井朗と、株式会社インフォマートの代表取締役社長 木村慎氏に、両社の出会いから今回の提携に至るまでの背景と、その先に見据える未来について語っていただきました。
※請求書受取サービス 導入社数実績 No.1:株式会社富士キメラ総研『ソフトウェアビジネス新市場 2025年版』<請求書受領管理 2024年度・数量・ベンダーシェア>
プロフィール
株式会社invox 代表取締役 横井朗
1977年3月生まれ。東京工科大学卒業。2000年にエンジニアとしてのキャリアをスタート。2003年に株式会社ビーブレイクシステムズ(東証マザーズ上場)に参加し、業務システムの開発を担当。2015年には、株式会社クラビスに参加し、2016年より取締役・CTOに就任。この2社での経験を生かし、2019年に株式会社Deepwork(現・invox)を設立。請求書受領システム『invox受取請求書』をはじめとするinvoxシリーズの提供を通じて、企業の経理業務の自動化とデータを活用した企業価値の向上に取り組む。
株式会社インフォマート 代表取締役社長 木村慎氏
1976年7月生まれ。慶應義塾大学卒業後、2000年に食品の総合商社へ新卒入社。その後、経営支援サービスの会社を経て、2007年に株式会社インフォマートへ入社。2014年より同社の電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』の立ち上げに従事し、2019年1月、電子請求書サービス事業の執行役員に就任。2026年1月より同社代表取締役社長に就任し、現職に至る。
【第1章】2020年、「デジタル至上主義」を解くための出会い
――まずは、両社の出会いから振り返らせてください。インフォマートさんと横井社長の出会いは、2020年の協業開始よりも前、2016年だったそうですね。
横井:
はい、私が前職で開発責任者をしていた頃です。大手税理士法人でのミーティングの際にインフォマートの方をご紹介いただいたのが初めてお会いしたきっかけです。その際は「請求書のデータ化ができます」と軽くご挨拶した程度でした。当時のインフォマートさんは、まさにデジタル化の先駆者という印象でした。
木村:
当時は「デジタル化まっしぐら」で、紙の請求書をどうにかするという発想がまだ弱かった。
インフォマートは、商談システムを立ち上げた当初から「プラットフォームという人のいない砂漠にお店を開いても、誰も買ってくれない」と言われながら、泥臭く市場を広げてきた会社です。そんな自負があったからこそ、逆に「デジタル以外は認めない」という頑固さもあったかもしれませんね。

――その後、2020年にインフォマートさんのBtoBプラットフォームへinvoxのAI OCR技術を取り入れるための協業がスタートします。その再会の場で、印象的なやり取りがあったと伺いました。
横井:
そうですね。再会した時、僕は思わず言ってしまったんです。
「インフォマートさんはデジタルの呪いにかかっていますね」と(笑)。
何でもデジタルにしようとするあまり、紙やアナログを抱えるお客さまのリアルな課題を置き去りにしていませんか、という失礼な話をさせていただきました。
木村:
その言葉にはハッとさせられました。確かに郵送代行などは始めていましたが、社内の「デジタル至上主義」の中で、アナログをどう効率的に取り込むかは大きな課題でした。
インフォマートはこれまで、デジタルプラットフォームで企業同士をつなぎ、見積・受発注・請求書など一連の商取引をデジタルデータで直接つなぐ「DtoD(Data to Data)」を推進してきました。請求書のデジタル化を切り開いてきたパイオニアであるという自負もあります。
しかし現実には、企業間取引の現場では、紙やPDFなどアナログ形式で届く請求書がどうしても残る。その処理こそが、経理現場の大きな負担になっていました。
だからこそ私たちは、DtoDで築いてきた世界観をさらに進化させるために、アナログ請求書を高精度にデータ化できるAI OCR技術を取り入れる必要があると考えたのです。
【第2章】経営の「内側」を見たからこそできた決断
――木村社長は2021年からinvox社の社外取締役に就任し、経営にも深く関わってこられました。実際に内側から見て、invox社はどのような組織に映りましたか。
木村:
何より驚いたのは、その圧倒的なスピード感。毎月必ず、新しい機能がリリースされていくことです。
インフォマートもかつて、組織がまだコンパクトでサービスも絞り込まれていた頃は、創業者の即断即決をダイレクトに形にできる身軽さがありました。しかし、現在は組織が多層化し、提供するサービスも増えたことで、どうしても全体最適のための調整に時間がかかってしまいます。
4年間、横井さんたちの経営を見続けて、「この誠実さと機動力があれば、大切なお客さまを支えるインフラを共につくっていける」と確信しました。今回の提携で新サービスの開発にinvoxさんと一緒に取り組むと決めたのは、この機動力を当社の強みとして味方につけたいと考えたからです。
横井:
スピードに関しては、僕がプロダクトオーナーとして現場の要望を即座に「やる」と決めて動かしているのが大きいかもしれません。もちろん組織として合意形成を図ることも重要ですが、変化の激しい市場環境では、議論を重ねてタイミングを逃すよりも、「まずは形にして一日でも早くお客さまに届けること」を最優先の価値としています。
この機動力を支えるのが、営業と開発が対立しない独自の風土です。
invoxでは毎週、営業と開発のメンバーが一堂に会するミーティングを実施していたり、顧客への導入事例インタビューに開発メンバーが同席するなど、開発のメンバーがお客さまの生の声を直接浴びる仕組みを設けています。すると、作り手側から「仕様としては正しくても、これでは使いにくいから恥ずかしい。すぐ直そう」という声が自然に上がるようになるんです。
社内外問わず「役に立ちたい」というホスピタリティの高い組織文化が、このスピード感の源泉になっているのだと思います。
木村:
目先の利益に惑わされない、サービスの本質に対する誠実さが、私にとっては大きな決め手でした。invoxさんは本当にお客さまのことを考えて、誠実な価格帯でサービスを磨き上げている。
それに、横井さん自身が「プロダクトの技術的な仕組み」と「顧客が真に求めている価値」を深く理解されているから、話が早いし、嘘がない。
ここから、すべての信頼関係が始まっていたんだと思います。
――今回、インフォマート社による出資比率は33%台となり、invox社は持分法適用関連会社となりました。より高い比率を持つ選択肢もあったのではないでしょうか。
木村:
一般論としては、より高い比率を持つ選択肢もあります。しかし、invox社の強みは機動力です。その源泉は、横井さんがプロダクトと現場課題の両方を深く理解し、意思決定できる構造にあります。そこを壊してしまっては意味がない。だからこそ、あえてこの資本構成を選択しました。
機動力を最大限に活かしながら、当社の顧客基盤と組み合わせる。それが今回の経営判断です。
横井:
今回の資本提携は、単なる関係強化ではなく、「信頼の証」だと受け止めています。独立した意思決定構造を尊重していただいたことは、invoxにとっても大きな意味があります。
両社で力を合わせて、最高のプロダクトをつくっていきたい。その責任を強く感じています。
【第3章】両社が叶えたいデジタル化の先にある未来
――最後に、両社がそれぞれ目指している未来についてお聞かせください。
木村:
私たちは25年前から、企業間取引のデジタル化に取り組んできました。ただ現実の現場には、紙やPDFなどさまざまな形式の請求書が残っています。だからこそ、デジタルだけを前提にするのではなく、そうしたアナログも含めて取り込みながら、企業間取引全体をデータでつないでいくことが重要だと考えています。
企業のやり取りがデータとして蓄積されれば、それを分析して事業、経営の改善につなげることができます。例えば取引の履歴が見えるようになるだけでも、これまで見えていなかったものが見えてくる。
企業間取引のデジタル化を通じて、日本の企業がより強くなっていく。その基盤をつくっていきたいと思っています。
横井:
invoxは「子どもたちが生きる未来を明るくする」ことを目指しています。
一社でも多くの企業に私たちのサービスを届け、課題を解決していく。そして、ずっと安心して使い続けられるサービスであり続ける。その積み重ねが事業の成長につながると考えています。
そして、事業の成長を通じて得た利益を、寄付プロジェクト『One by Oneインボイス』や森林保護・再生の取り組み『invoxの森』をはじめとする社会課題の解決への取り組みに投資していく。
そうした循環を続けていくことが、子どもたちの生きる未来を明るくすることにつながります。
今回の取り組みも、その目指す姿に近づくための大きな一歩です。